「謎床」だったんだ…

IMG_0250このところ、夏痩せ解消のためと称して少し食べ過ぎたためか、夏の疲れか、はたまた 私には計り知れない シコリんの都合なのかわかりませんが、縮小傾向にあったシコリんの右端が、ぽぽん と大きなナメコ大に成長しました。

それを機に、自問自答、答えのない禅問答のような問題、私の趣味の一つでさえある、一人フォーラムが始まりました(笑)。

そもそも論で、一体全体、このシコリんこと 乳がんがいなくなって欲しいのか、そうでないのか。

治る、回復する、シコリンのいらない身体を直線的に作り上げる、再構築することが目的でゴールなのか。

果たしてそうしたいのか、そうすべきなのか。

私の頭がおかしいのかもしれませんが、実はそこが乳がんだと言われてからの私の大きな答えの出ないテーマで、同病の友人たちを間近で見送ってきて、その苦痛を目の当たりにしてきてもなお、その問いは私の中に根強くあり続けているのです。

私を陰日向にサポートしてくれている両親、愛するオハナたちのことや想いを考えると、直線的にかつ速やかに、ガン完治!と言うグランドスラムに向けてひた走らなくては行けないのだと自分に言い聞せるも、子供の頃からのテーマである 「死」と言う問いと添い寝しながらのゾクゾクする長い夜を過ごしても、私の中の一人フォーラムには決着がつかないままでいます。

そんな中、一冊の本に出会いました。

編集工学の第一人者で知の巨人とも言われる松岡正剛さんと、IT界の異才と呼ばれるドミニク・チェンさんの対談をまとめた『謎床』。

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青天井の知識量とずば抜けた思考力を誇るお二人の対談は、ITの現状と未来についてから、ぬか床の話から、アニメから宗教の役割まで多岐に及ぶもので、ヒントと謎かけが詰まったワクワクするおもちゃ箱のようで、開けると手作り酵母サイダーのフタのようにしゅぽーん!しゅわしゅわーっと(笑)、美味しい飲み頃の刺激的な本でした。

この対談中にがんの再発が分かったという松岡さんの想いなどが短くもシンプルに語られているのですが、読み終えてふと、私の一人フォーラムがシーンと静まり返り、あることがすーっと腑に落ちました。

あ、そうか。

シコリンこと、この左胸の乳がんは、まさに私の謎床なんだ。

松岡さんの言葉を借りると「この自らの体内の異物性を思想や社会学や生命哲学としても語っていく」(『謎床』松尾正剛、ドミニク・チェン(晶文社)より)作業。(そんな大それた、知的な作業からは程遠いとしても(汗))。

シコリんと言う一筋縄ではいかない、複雑系の、いのちの世界からの、私へのメッセージであり、にこやかなる挑戦状。

私と言う小宇宙(おいのちさん時間がたゆたう)の中にある「いのち×感受性のうねり」のようなものを、漬け込んで発酵させて美味しくしていく、ぬか床のような役割をする謎床が、シコリンなんだ。

シコリんはついに、謎床と言う、怪しく美味しくうごめきながら体内に内包される 愛しき異物殿 と言う肩書きを戴き、この先「あ、いつの間にかシコリんがいない!どこだ!」と私が慌てふためいて探すような日が来るまで、きっと私を、私の中の小宇宙を、発酵させてくれることでしょう。

そんな気がして、台風前夜の今日のような肝どんどん(沖縄の方言で 胸がドキドキ騒ぐこと)の風が、胸の中を吹きぬけている午後でした。