チェ、タンゴ(ねえ、タンゴ)

imageタンゴを始めたきっかけは、友人から借りた小松亮太さんのCDでした。

タンゴ界の革命児アストラ・ピアソラの曲から、伝統的なタンゴ、モダンなタンゴを織り混ぜた魅力溢れるオモチャ箱のようなアルバム「ラ・トランペーラ(噓つき女)」にノックアウトされてしまい、以来タンゴに魅せられ続けています。

コンサートやライブにも度々足を運んでいるのですが、昨日催された江古田にあるライブハウスでの小松亮太さんとギターのレオナルドブラーボさん、コントラバスの田中伸司さん、近藤久美子さんのバイオリンによるコラボは、それぞれの演奏も、皆さんの息の合いっぷりも抜群に素晴らしく、すっかりハートを持っていかれてしまいました(笑)。

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小松さんとブラーボさん

タンゴを聴いていると様々な情景がその時の情熱や想いと共に、鮮やかに切なく湧き上がってきます。

今までの人生の軌跡、出会った風景やたくさんの人々、様々な出来事、出会いと別れ、胸がうち震えるくらいの喜びも、身悶えするほどの苦しみや悲しみの日々も、目がくらむようなビビッドな色彩をもって走馬灯のように浮かんでは消えていきます。

そして、同時に胸の奥にしまってあるはずの何かが、ふつふつと再び動き出します。

もっと自分の中に眠る何かを解き放って、目指した世界・夢見た世界で激しく生きたはずの人生…

もっと色々なところや見知らぬ国に旅をして、様々な風景や人びとに胸を震わせていたはずの人生…

ここではないどこかで、誰にも縛られずに、もっと自由闊達に風のように生きているはずの人生…

もう一つのあの道を選んだ私
あの角を曲がった私は
今どこで何をしているんだろう。

 

甘く切なく、情熱的なバンドネオンの音色とタンゴ独特の旋律が、どこかでこぼれ落ちた願望や叶わなかった夢のかけらを呼び起こし、それらが胸を痛いくらい鷲掴みにします。

でも…
それでも…
今、この私で、ここにいるのは、この街が、人々の小さな毎日の営みが、大切な人々の悲喜こもごもが、どうしようもなく愛おしいからです。

人生の終わりといつもどこかで鬼ごっこ、かくれんぼ、にらめっこをしながら、人々とのしがらみの中で矛盾だらけの毎日を、この街の季節の中で生きることが愛おしいからです。

でも、チエ、タンゴ(ねえ、タンゴ)。
今はもう少しだけ、1秒でも長く、この甘く切なくほろ苦い夢のかけらとダンスをさせて欲しい。彼らが踊りながらどこかの、誰かの夢になって自分の前から消えてしまうまで。
でも、想い出やほんの少しの未練だけは残しておいて欲しい。また生まれてきた時にこの続きができるように。(チエタンゴの陽気な音色はコチラ)

そんな郷愁と哀愁を、どこか陽気に、そしてすまし顔で包み込んでしまうタンゴの音色にそれぞれの想いを抱えながら、会場は静かに、そして熱く盛り上がっていました。

ワインも飲んでないのにすっかり酔いが回ってしまう、幸せライブでした。